俳優発声中級(2/27)                      《ことば系》

2月27日(水)俳優発声中級

講座テーマ「役づくりの生理:自分の外側と反射」

磯貝塾長による座学と演習
〔1〕役どころについて考える

◎今までは、演技の基本、演技論について考えてきた。しかし頭だけのつもり
 芝居をしないためには、自分を「そうだ」と錯覚させることが必要である。

錯覚には
 ・外からの形、格好による物理的なものを作ることで、内側も造りあげていく
  方法
 ・内面を関係性や台本から受け、書かれている状態や二重性などをとらえて
  造りあげていく方法

Q:台本に書かれた状態の‘心’をとらえるために台詞を読む。それには必要な
  条件がある。この心と言う、約束されていないものを、表現するにはどうすれば
  良いか?
A:先ず、前提条件なく素の状態で、
  台本を最初に読んだ時のその台詞の「ファーストインスピレーション」を失わ
  ないようにすること。心の動きをとらえて、新鮮さを保つこと。

〔2〕実演練習1
 「性分」「気質」の傾向、様式の類型分類表に書かれた言葉から受けたインス
 ピレーションをどんどん口に出していく。

 “インスピレーション”とは反射である。書かれたものを“何か”とか“ウン、そうか”
  等と自分に入れるのではなく、外側への反射で出していく。
 
 「100円玉」っていう実が来た時、反射で出したならば、「コロコロ」などとなる。
 中(自分の頭、心)に入れてしまうと、「欲しい」とかになってしまう。
 (しかし、オノマトペーになると、幼児化してしまうので、言葉として心にむすびつ
 けて出せるようになること)

◎自分に引き入れない“反射発信”の訓練を重ねると、逆に自分の中にスッと
 入ってきて、すっと出すことが出来るようになる。

〔3〕実演練習2:教師が1題ずつ出し、生徒は1人1人反射答えをまわす。
 例:言葉「ねえねえ」「えっと」「こんにちは」などの言葉を受けて発する。

〔4〕実演練習3:生徒が1人1題ずつ出し、生徒全員が同時に答えを発する。
〈注〉発題者が、1人1人それぞれ出していく時、名詞だけで出さないこと。

〔5〕実演練習4:演習3の各自発題を各自、文章化して、(自分の言いたい
 ことを)文として発してみる。※少し反射で出しにくく、言う人の心+性格が
 出るもの。

・物事を受ける時に、息をはいてはいけない。息は止めたまま受ける。
◎「受け」の生理条件を1つずつ覚えてゆくこと。
・自分の意味や自分の理解で読んではいけない。

・内側に入れてしまった場合、なぜそうなったか、それはどういう状態かを知り、
 内側にいれる回路を潰していく。

・頭と心の感性の反射で外に発せるようになったならば、そこに、例、テキスト
 「老女が椅子に座る」に対し、①全身が老女 ②椅子に座る ③“アア、つか
 れたネー”等が反射として興り発しはじめる。これを演ずると言う。

・「1人の役、1つの状態」に対し、沢山のものが発せられる様になること。
 あなた自身の素材で、自分ではない、別の自分を演じるには、「反射で」頭の
 使い方や生理を持ち、答えを増やしていけると、面白い芝居が出てくる。

・言葉も心も、外側に向かって、玉突きのように外に出す。
 心は強く感じるもので、思ってはいけない。自分に入れすぎたら、人に伝える
 ことが、難しくなってしまう。

◎心は、反応で演じると輝いて演じるが、自分に入れると重くなる。
・「反射のしかた」から、人格やキャラクターを造形してゆく。

・「バカ」と言われた時、バカの形、身体、生理を反射する。

・役どころは、いろいろ細かく決めているよりも、生理状態をつかんで、「その役
 なら、どんな体かな? どんな状態かな?」と自分の体を使って発してゆく。そ
 のことに必死になること。外側がある程度できてから、中をつくってゆく、その
 時、初めて、その役でもっての心が入る。

◎反射の演技のために
・演技者は常に自己の芯(意識)はしっかりしておく事が基本条件。重心の上げ
 下げは自由にできること。
・台本内容を自分の中の深い所で理解すると、本人の自己化と同一化してしま
 い、客観性の乏しいものとなりがちである。
・人の心は、本人でも自分の意識する事と、実際の行動との間には差のあるもの
 である。台本の心(その役のそのセリフ時の)は、1つに確定しにくい。まして表
 現行動では、誤差は拡大される。
・反射の演技では、相手役の心も、自己変化発生の心も、自己の内に引き込も
 うとしない。身体的に皮膚及び表層筋肉と、その外側(空間)でとらえ、内在化
 しようとしない。
・全身的、表皮的、感覚器官的に心をとらえ、反射発進する訓練を重ねる。

◆本日の磯貝語録
 考える暇があったら出せ、出してから考える事。
 心の反射を言葉に置き替え、更に文章化してゆく。

俳優発声中級(2/20)                      《ことば系》

2月20日(水)俳優発声中級

講座テーマ「キャラクター その外側と内側」

〔1〕和服あるき
 男性:下腹を下におろし、腰を返し、丹田ささえ、重心を足下に。
 女性:袖先を摘み、肘を曲げながら小股歩き。
 ※背が高い人は、重心を思いきり下げて歩く。膝をグッと曲げる。
 ※頭、首、背、全ての感覚が一本に繋がっていること。
 ※歩くのは大腿で、立つのはふくらはぎでやること。

磯貝塾長による講座
〔2〕「劇の虚と実」について
 ・ひとつのことをやろうとしていても、別のことが起こってくる。それが人間。
  定まらない。
 ・リアリズム表現とは、身体的、肉体的である。
 ・コンピューターの出現により、そこに居なくても、会話でき、コミュニケートでき
  るようになった。実生活が直接見えるものと、見えないものを同時に使用して
  いる。
 ・体が考えていることが、頭にいき、リアリティにつながる。出ている言葉がかな
  らずしも正しいとは限らない。
◎劇をつくっていくうえでの俳優の特権は、化けることである。
 ・現実で実感できることだけでは、つまらない。人を騙すことほどおもしろいもの
  はない。
 ・なぜ嘘をついているのに、全員しらをきって、正しいことを探そうとするのか?
  そのことを考えるのは、アーティストとして必要なこと。
 ・芸術には、答えがない。だからどんなことでも考えられる。
◎現実的なものからしか、感じとれないのは、大変さびしい。
 芝居とは、実と虚と行き来するものなのだから。
 ・波乱万丈であるほうが、人間らしく生きられるものだ。

〔3〕キャラクターを創る:老けという現象
 演習(1)「40年後の自分を作ってみよう!」
 セリフ「こんばんは」(入って来てフトンに座る。左右を見、自分の世界をつくる)
 ・老人の仕種、状態、声などを観察してみる。何を変えたのか。
  背中の支えを変えた、ゆっくり喋った、みぞおちをおとす、体を硬くした、
  顎を狭く突き出す、腰が曲がる、舌を脱力、目を細める、オトガイをゆるめる、
  肩が落ちる…

◎先ず身体的な特徴を細かく考える。
 ・手の甲に人の年が表れる。手の甲を80代にリアルにつくり、腕までつくれれ
  ば、そこからつかんでいける。

 演習(2)自分の手の甲に思いきりシワをつくってみる。両手にシワをつくった時の
      実感。
 ・声が変わるのは、肺活量や声帯が筋肉の変化だ。それはどういう実感かを、
  必死に探すこと。老人とは?老いるとは?
 ・俳優は演じるための引き出しを常に必死でつかんでいくこと。
◎見えているものから、それにつつまれていたり、裏にある見えてないものを捉える
 力が必須である。外形で見せるか?必死で外形をつくることは、実はその内を
 同時につくっていること。外面は内面があるから、リアリズムになる。
 ・真実をみつけようとすること、老人がなんなのかを具体的にすること。善がある
  から、悪がある。表があるから、裏がある。
◎表れていないものを、表わすことが、表現である。

 演習(3)シワクシャの手(両手)のまま、顔、口をつくる→何を感じ、どう思うか?
 皮膚や筋肉が衰え、消化器官は活発だが、排泄器官は劣化していく。身体の
 劣化により、精神も劣化していく。入れ物の身体をつくると、精神回路まで出来
 てくる。
 ・何かを演ずる時、納得しきったら、ダメになる。不安定要素(嘘)をいかにたもて
  るかで芝居のおもしろさは出てくる。

 ・人の観察を現実でとらえること。感性には、具体性があり、五感がともなう。
 ・感覚とは、ひとつの所からではなく、いろいろな所からあらわれる。
 ・考えるのは、抽象的に、思うというのは、具体的に出来ること。
 ・人間は格好つけなくなったら、老人化していると言うこと。
 ・見えているものをとらえて、見えないものをとらえる。おもしろいぞ!

◆本日の磯貝語録
 ・人は多チャンネルに出来ている。単チャンネルではもったいない。
 ・アーツは現実の確認ではない。なにかを発見しなくてはならない。
 ・人が見えない所まで、見て想像するのが、俳優の資質

◆本日の感想
 キャラクターを演じるための想像力の乏しさを痛感。本当にそのキャラクターに
 なるためには、キャラクターの「実」と「虚」をとらえないとウソになる事が分かっ
 た。やはり「虚―実」の命題は俳優の必須事項なのですねぇ…

俳優発声中級(2/13)                      《ことば系》

2月13日(水)俳優発声中級

講座テーマ「キャラクターの個人の内面性と社会的分類」

〈全員課題演習〉
 課題①性格を決める(分類表より) 1つ
    ②その気質で、行動などの動きを3つ決める(プロットは何でも可)

 演者     質          行動
 ①Aさん 〔イライラ〕    間違い電話をとる、電話をかける、別の電話にでる
 ②Bさん 〔弱気〕      商品を選ぶ、電話をする、店員に聞く
 ③Cさん 〔あきっぽい〕   セリフの稽古、絵を書いて、本を読む
 ④Dさん 〔意地悪〕     財布を拾う、知らないととぼける、返してあげる
 ⑤Eさん 〔何でも悪くとる〕 電車に乗る、人にぶつかる、道でつまづく
 ⑥Fさん 〔弱気〕      人に声をかける、電話をとる、交番に行く

 「性格」とは、俳優にとって、とても大切なこと。
 演ずるとは、頭で整理理解した事を、自身の生理に置き替えること。

 ・特長をとらえるのは、始めだけで、後は「皮膚感覚」でとらえること。
 ・普通の生活は、頭で考えていない、中に入れてしまったら、外に伝わらない。
  外と中の間が皮膚である。
 ・殿様、貴族を演じなくてはいけない時、どうするのか?
  (天皇、マリーアントワネット)これは神である。(宗教の神)
  貴族は民族の神様(かんむり)である。
 ・帝王学がある。それは帝王になるための形。帝王は生きながら、形にはめる
  ことで保たれているものである。
 ・王→華族→士族→豪族と区別されていたのに、今はぐちゃぐちゃ。
 ・お姫様の歩き方や動き方がある。
 ・キャラクターは、その形と生きざまである。
 ・キャラクターが生きる場所やもの、そのことがある。

◆本日の磯貝語録
 演じるべき役の生理をつくり出す。特に皮膚感覚を自身の皮膚につくりだすこ
 と。全身の皮膚をつくること。人間にとって外と内の界は皮膚である。

◆本日の感想
 性分、性格を表わすのは難しい。表現しようとした時、何かとの対応ややり取
 りから表わそうとするが、本質的なところで理解し演じるとどうなるのか考えま
 した。

俳優発声中級(2/6)                      《ことば系》

2月6日(水)俳優発声中級

講座テーマ「役づくり-(1) 老役」

[1]磯貝塾長によるレッスン
◎演劇の役づくりは、テキストに指定された条件をもとに、立体的にデザインし、
 性質、性格、考え方、思い方などつくり上げるが、それを入れる身体の生理情
 態をつくる事が必要となる。

(1)「老役」をつくる。
  今の時代から計算して役年を相対的に考えること。
  今は70歳~が老人と考えているが、昔は40歳~。年寄りの身体、声、精神
  があり、類型化すること。
A)身体の特徴をあげる。(耳が遠い、目が弱い、髪が薄い、皺、弛み、背が丸い
  etc.)
 ・自分の近くで80歳以上の親しい人を題材とし、身体、生理特徴、動き等を
  細かく観察し、実際の老人の実態を把握する。
 ・老けをやることで、今の自分が見えてくる。人間の重みをつかみとる。
B)声の特徴をあげる(ふるえている、はりがない、甲高い、音が消えていく、語尾
 が長い)
 ・背が丸くなると息がおちて、それでも声を出そうとすると、下顎に音がいく。
  支えて張っているものがおちていく。老人の笑い方がある、形がある。
 ・人の見方を客観的にする。老人を情で見てしまうと、役者として演ずるための
  観察ができなくなる。

◎今、生きている人間から学び、その真実をつかみ、身につけること。生きた芝居
 をするために、生きた人間を捉えること。
 ・自分から出て来たものより、そこにあるものをそのまま演ずること、言っている事
  以外のことを人間はしているし、それがそのものの生きざま。キャラクターは生き
  ざまである。
 ・台本に書かれた、語になった‘心’は、ほとんど表現しきれない。だからこそ俳
  優は、語と文の中から、すべてを見つけ出し、体におとして、心を演じなくては
  いけない。
 ・演技は、言われたことをそのままやるのではなくて、想像しておもしろくすること。
  でも、書かれたこと以外のことをしてはダメ。
◎芝居をするにあたって、芝居とは、何なのだろうと考えること。

(2)条件をつけて、演じてみる(老人でやること)
   以下の条件で老人のドラマをつくり、演じてみる。
 条件-①テーブルの上に自分の持ち物を1つ置き、スタート線から歩き、取りに
       行く。
 条件-②2組になって、片方の持ち物をもってきてあげる。
 ・全てその場で考え、その場で演じ、続けてドラマをつくり上げてゆく。
 ・やっている人間がどう言う人間なのか、先ず、そこから決めてからつくっていく。
 早く老人になって、やりあげてしまったら、状態が後からついてくる。
 ・初めから条件に入ってしまう、そして、外との関係をつくり、外に向かって出す。
 ・自分が何で、どんな関係かを決めて、自分の中のソースを使いながらつくる。
 ・様々のエピソードをつくり上げ、ドラマをつくり出す。
 ≪エピソード=様々な生きていく瞬間を具体的に挿入する。≫

 ・老人とは、これからなっていくもの、自分から遠いものを演じた方が自分になら
  ずにいられる。
 ・口の中や鼻の中、すべてが老人なのだから、その状態をつくる。
 ・人間の状態を克明にするのが、俳優の仕事である。
 ・自分のスタイルをみつけていくこと。

◆本日の磯貝語録
 ◎すぐ先が無くなる様な芸でなく、自分がいつまでも追い、そしてつなげて行ける
 芸をつかまえることが大切。
 ◎芝居はつくるもんであって、教わるもんじゃない。

◆本日の感想
 “老役”は実物を沢山観察が必要だと実感した。何となくつもりでやれる程、
 楽ではない。でもなかなか面白かった。

俳優発声中級(1/30)                      《ことば系》

1月30日(水)俳優発声中級

講座テーマ「態度と仕草」

[1]「表現としてイキイキしているとはどういうことか?」(磯貝塾長)
 (1)ウソがないこと
 (2)隅々までいきわたっていること
 (3)身体に気が充ちていること
  を基本に構築する。

・書かれている感情や状態を表現者が適格に表出するには、意思が必要で
 ある。俳優は自分ではないものになり、反射的意思で表現しなければいけ
 ない。
・無意識を意識的にする。
 ウソのない、自分にも客にも納得できる真実を見つけ出すこと。
 真実をつかもうとする意識を強くする→常に検証する。

◎Aの性格で、お金をばらまいた時、どんな意識を持つのか?
 これを丁寧にときほぐし、様々の意識過程を分析してみる。
 お金をばらまいた→態度→しぐさ→表情→声→表現

[2]実演練習①
 テキスト「性分」「気質」の傾向から一つ選び、表現する。
 (セリフもつくれると良い)
 ※限られた条件の中で造りあげていくこと!!

(1)演技をする上で、配役を具体化するためにコンテをつくる。
 ≪役造りコンテ≫
 ①♂♀、年齢、Body、名前-本人条件(本に書かれていること)
 ②人間相関図-人関係(本に書かれていること)
 ③場、時-環境(本に書かれていること)
   →“1次コンテ”台本に書かれているものを抽出
 ④性質、性格(性分テキストより)-想像時にはつくりだす
   →“2次コンテ”文脈から見付け出す

 ・決めた性分が一番表現しやすい状態や場を作っていく。
 ・どんなことがおきたのか、どんな気持ちだったのか、書いてないことを、どん
  どん自分で考えて決めていくこと。季節、色、時間

 ◎ドラマを深めていくのは、俳優の仕事。
 ・何もない所から、「こうだなっ!!」と造っていく(立体造形)、心のうごきまで
  造ること。(イメージィング又はデザインする)
 ・書いてあることを、ただ読むのは戯曲解析にもならない。
 ・俳優はものを造れる人。見えないものを見せようとする人。

 ◎すべてに原因があり、芝居は客に対して、その原因を観せる仕事。

 ◎「本当は何なんだ!!」をいつも考え、離さないようにする。
 ・このキャラクターなら絶対にこうするというものをとらえること、考えること。
  決めた性分の仕草をみつける。

 ◎息を無駄に吐く演技は、芝居をダメにする。
 ・書かれたテキスト、与えられたテキストをきちんとやりあげること。
 ・気質→態度→仕草→声→言葉
 ・「この気質」は得意である、というものをつくっておくこと
  (中間的なことは、不利になるからやらない)
 ・自分の生々しさから入る演技は上等ではない。
 ・気質は、一人でできそうなものと対人がいないとできないものとある。
 ・ステレオタイプをつくること、誰が見ても分かるものをやる方が良い。

[3]実演練習②
 例題(1)朝。明るい性格の人があくびをする。
    (2)敏感な人が携帯をとる(とった後まで敏感でいられるか)
    (3)温かいひとが椅子に座る(温かい人は息をはきたがる)
 ・関係やしぐさの前に、どんな心理状態なのか、ただ座っているだけでも、
  気質は出てくるもの。そこを突きつめていくこと。

 ◎芝居は、内面や外面をまねることではなく、芯のところをつかまえること。

 ◎生きている人間の筋(すじ)をとらえるのが、演技である。
 ・人間観察をする。あの形の時はどんな内面(精神状態)か?
  あの時の頭の中はどんななのかなぁ…と考えてみる。
 ・物体に対しても造り出す事ができるようにする。
 ・想像しながら、その中に入っていくことをしてみる。
 ・発展して、具体的にしていくことができると、表現につながる。
 ・再現性がないものは芸になりにくい。形でもって同じことを繰り返すことが
  でき、密度が増すことで透明度があがる。この考えが日本の芸の考え。

 ◎やりっぱなしにしないで、蓄積させるところに“芸の本質”がある。

◆本日の磯貝語録
 人は常に自分が理解している事が“真実”なのかを問い続ける心と頭の回路
 を持つ事が必要だ!!〈むだに息を吐くくらいなら、声にしなさい!!〉

◆本日の感想
 気質や性分について、今迄なんとなくしか理解していなかった事が分かった。
 自分についても他人に対しても「こういう状態」というのが不明確で表わすこと
 ができなかった。人の表面だけでなく、芯を見つけ出す事(観察、探求)が必
 要とわかった。

俳優発声中級(1/23)                      《ことば系》

1月23日(水)俳優発声中級

講座テーマ「性格表現とキャラクター」

[1]磯貝塾長による座学
 Question:性格や人格とは何ぞや? 何でも思うことを言ってみてください。
 塾生のAnswer
  ○人格(personality)
  人柄、人となり、劣という言葉を適用しない、社会的、“人が変わったようだ”
  ☆自我の動きをもって変化する。
 ○性格(character)
  タイプ、価値観、気質、名詞的、優劣を決めたがる
  ☆心の厳選をすることができる
  ☆外部に表わすことができる、外に出ている
 ○性質(temperament)
  根本的、本来のもの、要素化された
  ☆気質、性質は先天的にもっているもの
 ※心理学的立場と哲学的立場では、言葉の概念理解が異なる。

 ・日本人が漠然と持っている定義を俳優はどう選択し、理解、活用するかを
  明確にする。
 ・内在しているものも見方を変えたら、見えて来る。このような柔軟な思考が、
  表現者には必要。
 ・外に見えて来るものを第一に探し出し、客が見えて来るものを先ず作ること!!
  外に分かっているもの(キャラクター)を早くとらえること。
 ・人格が変われば、形体も変わり、当然、音声、喋り口も変わる。
 ・文学を解釈するのは、性格や性質の違いを見極め、宝探しをすること。

 ◎性格と性質は別ものである!!日本人はごちゃごちゃにしてしまう。
 例:俳優は、がんこおやじだと決めたら、お人よしな部分は考えない。
   赤は赤だ、と思え。この考えこそ“キャラクターライジング”である。

 ◎日本人は、「私」と言う主体を現わにしない民族性を持っている。
  そのため、外に出さないからこそ、内なる自分を手放さず、自分化してしまう。
  自分(私)以外をやり難い。多くの事を自分に引きつけてしまう。

[2]「性分」「気質」の傾向・様式の類型分類表を使ってのゲーム
 ①「すばやい」甲さんが“朝、何時に起きたか?”
  逆に「どんくさい」甲さんが“朝、何時に起きたか?”
  各々のキャラクターで表現する。
 ・「すばやい」気質ってどんなの?「どんくさい」気質ってどんなの?
 「すばやい」と言ったら、髪の毛まですばやい、「どんくさい」と言ったら声まで
 どんくさい。
 ・キャラクターをつくるうえで、赤は赤と分かりやすくつくるほうが表現しやすい。
  種々の赤は考えない。単純化する。
 ・自分のことが良く分かっている人ほど、自分と反対のものができる。

 ②「おだやか」「怒りっぽい」で、“隣の人から52円貸してもらう”芝居をつくる。
 ・その性分で、セリフを考えて、演じなければいけない。
  会話になっていっても、赤は赤だし、犬は犬と、徹底的にキャラクターとして、
  外に出していく。やりながら別なものにしていかないで、そのキャラクターで
  やりあげる。

 ③「自意識過剰」「自信喪失」で、“健康リングを販売する人”の芝居をつくる。
 ※金属(ゲルマニュウム)、効用は?、 金額32,000円、ナサ(Nasa)、皇室御
  用達等→これを絵(図)にすぐすること

 1.Aさん(自信喪失) 2.Bさん(自信喪失)  3.Cさん(自意識過剰)
 4.Dさん(自意識過剰) 5.Eさん(自意識過剰) 6.Fさん(自信喪失)

 ・自信喪失な状態はどんなものか、自意識過剰な状態を外側につくること、
  分かっているからできるのではない。俳優は精神的体力がないとダメである。
 ・こうでこうでと考えないで、決めたら、そのことをやり続けること。
  悩まないタイプの方が、表現が大きくて良い。
  細かいことが分かるから、大きいことができる。
 ・止まらないくらい思いつきが出続けるのが大切。
  うそをつき続けていけるようになること。

◆本日の磯貝語録
 芸人には根の所をジックリ考える頭と、考えではなく反射的に次から次に意見が
 わき出てくる頭とが必要。

◆本日の感想
 今まで大雑把にあつかっていたが、性質、性格、人格の違いを学び、その違い
 を演じたが、面白い。

俳優発声中級(1/16)                      《ことば系》

1月16日(水)俳優発声中級

講座テーマ「役と人格(2)-日本語の形と日本の型」

[1]日本の芸能には「形(かた)」がある。
  そのお陰で大雑把に多くの人に通じ易くなる。
(1)座る-丹田にのっていること(*着物を着ていること!)
  立つ-踵をあわせて丹田にのり、でっちりになり、みぞおちをあげる。
  歩く-男性は公式の場合、袴をはいている。袴の時は、大股で歩く。

(2)お辞儀(正座式)-指先から利き手をつき、もう片方もそろえて、相手の眉間
  を見つつ(第三の目の位置で見る)、肘から曲げていく。顔からゆっくり上げ
  て肘を伸ばし、片方づつ膝に手を戻す。
  *二人づつになり、向き合ってやってみる。

  儀礼の時は、喜怒哀楽の感情は押さえ込むこと。
  「おはようございます」「ありがとうございました」「こんばんは」
  それぞれ縦口で言ってみること。喉が下に下がり、丹田まで一直線に一本道
  ができる。こうなることで、声が体に伝わり、実感がでてくる。喉から
  下が大切です。
  口跡(こうせき)から意味が伝わるように、つくり上げていくこと。

◎和の芸、和語の芸と形
 人が群をなし生活や活動をする時、それぞれのやり方を持ち、育てて行く。
 世界中、古くから人々はそれぞれのやり方、特に「形」を持って生き合って
 来た。特に身分社会では、各身分により、形としての生き方を持っていた。
 日本はおよそ100年前程は身分社会が残り、「形」が残っていた。それは、
 個人のレベルから国民全般に至るまで、様々な種類があった。衣食住の形、
 職での形、コミュニケートの形。各々の基底をなすものに「語」、ことばが
 あった。喋る語も、書く語も明確に「形」があった。そこには、“かく在る
 べく”という明確な規範があり、それに従っていた。
 日本人の芸は当然この日本の形の中で行われ、場合によっては形を事さら
 に重要とした。しかし、近現代での社会の欧米化で形はくずれた。俗に云う、
 自由となった。いくら人は自由になっても、生き合って行く(社会化して行く)
 には、約束事を持たないとやって行けない。制度というものだ。芸にも制度
 としての約束事-形がないと成立しない。当然、日本語の芸にも形がある。
 言語はくずれ行くものだからこそ、形と言うものが重要で、それを美や表現
 という力を入れ守ろうとするのが、日本語の芸だ。

◆本日の磯貝語録
 日本語の本来の言葉は、声で決まる。

◆本日の感想
 和の世界に触れ、刺激的な講座であった。足袋を付け、着物を着、立ち居振
 るまいから、ことばや声を学ぶ。何だかとっても日本人になった感じがした。
 いつもは何人だったのだろう?

俳優発声中級(1/9)                      《ことば系》

1月9日(水)俳優発声中級

講座テーマ「役つくりと発声表現/性格表現とは」

19:00~ 各自ストレッチ  
19:30~ アーツの種類
(マスで判断してもらうアーツと自分で判断するアーツ、パーソナルアーツ)

[1]性格(キャラクター)について
・パントマイムの格言 "自分の置かれている環境(物理空間、人間関係、
精神空間)を次々と変えろ"
・座敷芸と立ち芸
  ↑
  日本の芸は言語の質などからしても座敷芸の方が似合う

・人間のキャラクターというのは“他人と対比する事で初めて認識される”
 自分で一生懸命自分の事を分析するというのは違った考え。

・何かを出そうと(表現しようと)した時に、それを分析し、理解してから出 そうと
 しても出ない。生々しい挙動というのは、理解した時点で終わってしまう。
 本来の生々しさは何かを出すのが先で、それを出しながら理解するもの。
 演技の中でこれをどの様に生かすか?

・常識的な概念(右と左や今日・明日・明後日)は、決まり事なので変えられな
 いし、変えてはいけないが、人の心は逆。決まった形はもたない。
 芝居においては筋道はあるが、だからと言って心の形にレールを敷くと
 面白くない芝居ができる。役を演じる事で重要なのは、その性格がいかに
 生であるかである。

[2] “性格”とはどんなものか?(Character Dynamics)
 ・他人が決める不定型なものではないか。
 ・明るいか暗いか、外向か内向か。精神的で、肉体的。
 ・人との付き合いの上で合う、合わないがある。
 ・人に「こういう性格だ」と言われる事で、逆にそうならないようにしようと
  したり、そうあろうとしたりする。

・キャラクターは全部決めなくていい。
  半分くらいは決めて、半分くらいは出たとこ勝負
 ものごとはよく二極化で判断されるが(明るい・暗いなど)、実際は三極化し
 た方がよくわかる。
  明るい⇔暗いの間の点が右に行くと暗くなっていくのではなくて、
  明るい⇔暗いの中間によくわからないXがあって、「明るい」はどこまで行っ
       ても「明るい」というように、面や立体で考える。

◆本日の磯貝語録
 ◎歯が無い役を演じるなら、歯が無い事を真似るんじゃない。
 歯が無い人は、歯が有るようにしゃべりたい。

◆本日の感想
 死んでいる“役”=相対的性質に生命=絶対的性質を吹き込むものが、役者
 の基本技術であり、核を残し、そぎ落としたあとに残ったのが個となる、と思い
 ました。新年早々、刺激的でした。(M・I)

俳優発声中級(12/12)                      《ことば系》

12月12日(水)俳優発声中級

講座テーマ「語と感情-試演会」

[Ⅰ]各自柔軟と声出し

[Ⅱ]組み分けと練習
  ①Aさん
  ②Bさん
  ③Cさん
  ④Dさん

 <事前注意>
  ・自分の外に仕上げる→外の意識をつくる
  ・丹田が浮くと臨場感がなくなる
  ・場や環境を克明に空間化する
  ・空気感をつくること(寒いって時に体が変わる)
  ・次の人に繋げること、前の人を繋ぐこと
  ・口跡をはっきりと仕上げること
  ・本息を早くつかむこと

  ◎芸人は奇跡が起きる起こせるものである
   トップは華やかに、ラストは締めること!

 1.Aさん、Bさん、Cさん、Dさん組 試演。その後講評
 2.青島、磯貝塾長、西本組試演。感想、検討会

 ・この物語は、"怪談"なのだから、とにかく恐くなくてはいけない。
  書かれた物語の先がどうなるのか、「雪女」でいえば巳之吉達家族が
  この先どうなってしまうのか、ということを創造すること。
 
 ・怪談は演じた後、お客がなんとなく居心地が悪くなるような
  いたたまれなさを思わせるような芝居を作らなければいけない。

 ・口跡が語る。物語は私が語るのではなく、口跡が語り導くもの。

 ・巳之吉で恐さを表せないから、恐さが出せない。お雪のセリフは
  確かに大切だが、その怖さを受けている巳之吉の恐さを表現できなければ
  恐さはでない。
  そういうことを見つけ出す能力が必要。
  また、読み手がこんな恐ろしい話はないと実感していなければ読めない。

◆本日の磯貝語録
  文字で書かれたものに心を吹き込み生きたものにする。様々な心を声で
 表すのが声の芸である。

◆本日の感想
 磯貝組の試演本番を聴けたのが良かった。自分達は、各々克服できたもの
 と、できないものがはっきりし、やはり本番を経る必要を痛感。とても有意義で
 あった。(M.M)

俳優発声中級(12/5)                      《ことば系》

12月5日(水)俳優発声中級

講座テーマ「語表現・文表現と音づくり」

[Ⅰ]ストレッチ(磯貝塾長)
 ①顎を開ける→顎関節を大きく開ける。側頭を上に引き上げ、下顎骨を下に
  引き下げる(注:口唇や口を開けるのと違う)
 ②顎開けで喉開け
  顎開けで咽口部
   イ)硬口蓋から奥鼻腔
   ロ)口腔奥壁
   ハ)舌骨から喉頭
    を開ける運動をくり返す。
 ③子音のかまえと調音調整
  1)口唇運動とかまえ(リップル)
  2)口腔内息当て
    イ)歯茎部
    ロ)硬口蓋
    ハ)軟口蓋
    ニ)咽頭
  3)上顎と舌の気撥運動(タンギング)
  4)調音練習
    Ma, Pa, Ba, W , Su, Zu,
    Nu, Lu, Du, Tu, Ku, Gu, Yu, Hu,
  5)母音、調音調整(クリアーに) 
    I, E, A, O, U,
  (注)息の支えは深く、響き位置は正確に、かまえは早く長めに
 
[Ⅱ]声による語・文表現演習  「雪女」(小泉八雲)(約9分)
  ・四段に区切り、各段担当を、決めまわし読み。
  ・各組で担当を替え、読み合わせ。
  ・組み替え、段替えをして読み合わせ。
  ・前の人の読みをうまく受けて読んでゆく。半ば以降は、次の人に渡すことを
   準備する。
  ・自分の段でテンションを落とさないよう努力する。
  ・四人でひとつのものを作ろうとする。

  ◎次回試演会はこの形態で行う。

◆本日の磯貝語録
  その語や文を声に出すことで、各々の実感が湧き、新たな意味や想像が
 興り、広がりや深まりや強い実感が湧き上がる。

◆本日の感想
  雪女を読んだ。とても難しく大変であった。集中が続かない。平板になる。
 読んでいる・・・・・やはり身に付いてないものはうまくできない。(K.K)