講座テーマ「役づくりの生理:自分の外側と反射」
磯貝塾長による座学と演習
〔1〕役どころについて考える
◎今までは、演技の基本、演技論について考えてきた。しかし頭だけのつもり
芝居をしないためには、自分を「そうだ」と錯覚させることが必要である。
錯覚には
・外からの形、格好による物理的なものを作ることで、内側も造りあげていく
方法
・内面を関係性や台本から受け、書かれている状態や二重性などをとらえて
造りあげていく方法
Q:台本に書かれた状態の‘心’をとらえるために台詞を読む。それには必要な
条件がある。この心と言う、約束されていないものを、表現するにはどうすれば
良いか?
A:先ず、前提条件なく素の状態で、
台本を最初に読んだ時のその台詞の「ファーストインスピレーション」を失わ
ないようにすること。心の動きをとらえて、新鮮さを保つこと。
〔2〕実演練習1
「性分」「気質」の傾向、様式の類型分類表に書かれた言葉から受けたインス
ピレーションをどんどん口に出していく。
“インスピレーション”とは反射である。書かれたものを“何か”とか“ウン、そうか”
等と自分に入れるのではなく、外側への反射で出していく。
「100円玉」っていう実が来た時、反射で出したならば、「コロコロ」などとなる。
中(自分の頭、心)に入れてしまうと、「欲しい」とかになってしまう。
(しかし、オノマトペーになると、幼児化してしまうので、言葉として心にむすびつ
けて出せるようになること)
◎自分に引き入れない“反射発信”の訓練を重ねると、逆に自分の中にスッと
入ってきて、すっと出すことが出来るようになる。
〔3〕実演練習2:教師が1題ずつ出し、生徒は1人1人反射答えをまわす。
例:言葉「ねえねえ」「えっと」「こんにちは」などの言葉を受けて発する。
〔4〕実演練習3:生徒が1人1題ずつ出し、生徒全員が同時に答えを発する。
〈注〉発題者が、1人1人それぞれ出していく時、名詞だけで出さないこと。
〔5〕実演練習4:演習3の各自発題を各自、文章化して、(自分の言いたい
ことを)文として発してみる。※少し反射で出しにくく、言う人の心+性格が
出るもの。
・物事を受ける時に、息をはいてはいけない。息は止めたまま受ける。
◎「受け」の生理条件を1つずつ覚えてゆくこと。
・自分の意味や自分の理解で読んではいけない。
・内側に入れてしまった場合、なぜそうなったか、それはどういう状態かを知り、
内側にいれる回路を潰していく。
・頭と心の感性の反射で外に発せるようになったならば、そこに、例、テキスト
「老女が椅子に座る」に対し、①全身が老女 ②椅子に座る ③“アア、つか
れたネー”等が反射として興り発しはじめる。これを演ずると言う。
・「1人の役、1つの状態」に対し、沢山のものが発せられる様になること。
あなた自身の素材で、自分ではない、別の自分を演じるには、「反射で」頭の
使い方や生理を持ち、答えを増やしていけると、面白い芝居が出てくる。
・言葉も心も、外側に向かって、玉突きのように外に出す。
心は強く感じるもので、思ってはいけない。自分に入れすぎたら、人に伝える
ことが、難しくなってしまう。
◎心は、反応で演じると輝いて演じるが、自分に入れると重くなる。
・「反射のしかた」から、人格やキャラクターを造形してゆく。
・「バカ」と言われた時、バカの形、身体、生理を反射する。
・役どころは、いろいろ細かく決めているよりも、生理状態をつかんで、「その役
なら、どんな体かな? どんな状態かな?」と自分の体を使って発してゆく。そ
のことに必死になること。外側がある程度できてから、中をつくってゆく、その
時、初めて、その役でもっての心が入る。
◎反射の演技のために
・演技者は常に自己の芯(意識)はしっかりしておく事が基本条件。重心の上げ
下げは自由にできること。
・台本内容を自分の中の深い所で理解すると、本人の自己化と同一化してしま
い、客観性の乏しいものとなりがちである。
・人の心は、本人でも自分の意識する事と、実際の行動との間には差のあるもの
である。台本の心(その役のそのセリフ時の)は、1つに確定しにくい。まして表
現行動では、誤差は拡大される。
・反射の演技では、相手役の心も、自己変化発生の心も、自己の内に引き込も
うとしない。身体的に皮膚及び表層筋肉と、その外側(空間)でとらえ、内在化
しようとしない。
・全身的、表皮的、感覚器官的に心をとらえ、反射発進する訓練を重ねる。
◆本日の磯貝語録
考える暇があったら出せ、出してから考える事。
心の反射を言葉に置き替え、更に文章化してゆく。
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