11月9日(日)声・ことば表現テーマ別
講座テーマ「『平家物語』(1) 祇園」
[Ⅰ]研究発表
(1)「平家物語」の概要:塾生 林恒宏さん
・資料による概要説明
(2)なぜ「平家物語」か。(塾長)
・現在の芸能のすべての基本は中世にある。
①現在から考え始める ②歴史から考えていくのとでは考え方は、逆で。
演劇→共時性と、普遍性とを含むもの。
↘今のことを書いてきた。だから、当時のことは昔になっている。
平清盛を今化(現代化)することも可能。
歴史は変えることができない。これは絶対である。
歴史はすでに終わった。どう解釈していくかが問題。
↳この立場を明確にして演劇をやらないとダメ。
(3)歴史と演劇について
・演劇は、いまのことをやるという1つの使命がある。各々の時代の今を書いてい
る。
芝居をやっていた時代が今であり、今の現在とは、当然時差がある。
それを埋めたり、跳躍することで、過去を普遍化することができる。
・ロシアの自然主義と、リアリズムは、演劇に強い影響を与えた。
戦後の日本にとっては、大ショック(型に入ってそこをやるやり方だったから。)
この影響をうけて、歴史ではなく今をやる 今の日本の演劇の形になった。
・新劇は、リアリズムに走った。
・演劇がなくしてしまったもの
全くないものを創り出す力、本来の創造力。何かをあばく力、本質を探り出
す力
(4)「平家」を演じる意味づけと、方法論
・時代を飛ぶ、状況を変える。→リアリズムでは無理。言葉で跳躍する。今と
つなげる。
・「平家」の時代
同じ人間だが、環境による生態・生活方法は、その時代のものである。
・意味よりも感覚で捉える。読み手は感覚で捉える。
・「平家物語」が今になるためには・・・・。
「源氏物語」では、遠すぎて難しい。今の私たちは、自由に飼いならされている
から。
<芸人とは>
・基本はとってもイイ人。でも、すこぶるひねくれている。
表を精密にやるために、裏をよく知っている。
・感覚を育てる。
・意味を具体化しない。特に説明してはダメ。
・感覚は、瞬間的。視覚的感覚はアニメに負けたと自覚する。代わりに聴覚、
触覚を使う。
・本来の演劇に戻す。
・生身の人間が、生身の人間に訴える演劇は強い。
→そのために、共時的であることが大事。
ただし、視覚に頼らない。五感の演劇をつかみ取ること。
◎頼りになるのは聴覚、触覚である。
◎知覚でやっかいなのは、抽象。それを具体化するのが言語。
◎演劇の言語は具象、具体の道具である。そのためには、言葉は、五感語で
あることが条件。
抽象と具体化の橋渡しは俳優の仕事!
・言葉を使って表現をするときに、言葉のリアルより抽象を感じると、自分に吸引
してしまい、他人は置いてけぼりを食ってよく分からない。
・言葉を自己化しない。
・宙ぶらりんで出しておく。
・感覚がわかって、自分の周りにぶらぶらしているのなら、芸術家である。
◎共有のための共感。これがなくて意味だけ分かりあるのは、つまらない。
[Ⅱ]テキスト演習「平家物語」
祇園精舎の・・・各自練習。
・~の~の~の 「の」を感覚的に発する力が必要。
・口読み、文の流し読みは慎む。
・語音は身体音として語る。
・リズムをつける。
・早くないスピード感が重要。
[Ⅲ]「祇王」演習
・言葉より感覚で、ぱっと、あるがままに捉える。
・喋る以前に心はある。入ってしまうと意識になる。
→その瞬間のものを捉える訓練をする。
・文学解釈でとらえるとつまらない。演ずることはできない。
◎何かを感じるときに、認識よりも心を感じること。思いまでいってしまうとことばに
したくなくなる。
◎(言葉になる、もしくは文章になる)その前の心に真実はある。理屈に入る前
の気づくか気づかないかの瞬間に気づけるか。
◎心で見ることができるか。心が動く前にあるもので「祇王」を読むと面白い。
・今日は、どういう物語か、共有することがテーマ。
(1)「祇王」を楽にまわし読み
・語にのって何回も喋っているうちに、意味が出てくる、付いてくる。
・リズムをつける。すると動く。
・うまくリズムをつけるとノリやすくなる。つけすぎるてはまた違ってしまうが・・・。
・自分の納得は、半分でも前に出す。
・祇王の母・・・P48のセリフでは、嫌な母だが嫌な母親でやってしまっても、生
ではない。嫌な母で全編を読んでしまうと違う。
(2)読み終えて
・日本人じゃなくてはできないというものではなく、音で捉える。
・現代の世相にのったものではなく、先人が心打たれたものは現代人も心を打
つ。そこをみつけていくのが芸術家ではないか。
・腹応えのある作品をつくる。後戻りではなく先へ行くこと。視覚に走るのでは、
すでに遅い。やっていないことを見つける。俳優に力がなければできない。
(3)読み終えて、どんな精神状態ですか?(塾生の感想)
・言葉のリズムに乗る。語り物の特徴では?
・リズム、単語などに、日本人の情感を感じた。
・分からないけど、「あぁ~」となる。→共有できた。
・オペラのようだ。ストーリーは単純だが、ことばの音が、音楽になる。
・音声が飛んでくる。文字が飛んでくるのとは違う。音声がとんでくるのはとても
快いこと。語りを文字にした、そのために立体感がでた。
・外国で芝居を観ているのと一緒。初めは分からないけど、知らないうちに入っ
ていく。最後は笑って終わる・・・みたいな。
・文楽で字幕をみると、セリフを追ってしまうが、見ないほうが入ってくるの逆か。
・シェークスピアについて・・・
イギリスでは、知り尽くしている人がやる。なんとなく知っているではやっていな
い。知り尽くしてやるのがプロ。などなど
◎やり終えたときに、ふっと沸き起こったものを捉えておくこと。
◎読んで、もっとおもしろさを捉える。
心の感覚を研ぎ澄ませて読む、気持ち、おもいという方向へいかないこと。
心の感性で、文章とつきあう
◆本日の磯貝語録
①"本来の生身の人間が生身の人間に訴える強い演劇"で頼りになるのは、視
覚ではなく、聴覚と、触覚である。
②"それなり"ではない、そのものを知り尽くして十全にやり上げるのをプロフェッ
ショナルという。(今は少ない)
2008/11/09 (Sun) 22:00